アウトサイダー文学の決定版、
ついに発刊!!
(2024年3月26日取次搬入)
破滅派の創設メンバーにして、福井の眠れる天才、怒りの子供部屋おじさん、のっぴきならないロスジェネ、孤高の反出生主義者……。
ほろほろ落花生の人生と文学のすべてが詰まった全集が破滅派より発刊!
詩・散文・小説・ノンフィクション・書簡・年表のほか、高橋文樹によるノンフィクション「クロニック・ペイン」「コール・ミー」も同時収録。当事者が言葉にできなかった忌まわしい男性による性被害の記憶、そして、謎の病気による就職氷河期での転落を記す。

タイトル | ぼくは君がなつかしい ほろほろ落花生全集 |
著者 | ほろほろ落花生 |
編者 | 高橋文樹 |
出版社 | 株式会社破滅派 |
ページ数 | 524ページ(A5並製) |
販売価格 | 本体価格2700円+消費税 |
購入方法 | 全国書店・通販サイト・破滅派直販サイトからご購入いただけます。 |
注文方法 | 書店様向けの注文方法はこちらをご覧ください。 |
内容紹介

ほろほろ落花生 プロフィール
1979年、福井県に生まれる。地元の進学校を卒業し、東京大学に入学。詩作をはじめとした文芸創作にのめり込み、太宰治、大江健三郎などの尊敬する作家の所属した仏文科に進学。 新日本製鐵の内定を得て卒業するが、原因不明の疼痛が発生。療養生活を経たのち、出社時に行方をくらまし、フランスに逃亡。パリのホテルから退社メールを提出。 高橋文樹と北千住で同居を開始。教員免許の取得を目指すが挫折し、福井へ戻る。翌年、地元の先輩を頼って再び上京、社会福祉法人のアルバイトをしながら保育士資格を取得。 2007年、高橋文樹らと破滅派を結成。保育士資格取得後、社会福祉法人を辞めてフリーライターに。2010年に面倒を見てくれていたライターと対立、再び福井に戻る。 福井では反出生主義へ傾倒し、文学作品への昇華を目指すが、その思想の過激さゆえ周囲と徐々に対立。 2021年、コロナ禍による飲酒量の増大とともに人生の黄昏時が近づきつつあることを悟る。高橋文樹『アウレリャーノがやってくる』に触発され、人生を総括する書の出版を決意する。
Photo: Naoki Tatori(STUDIO IKKEI)
構成
- 東大仏文時代(1998-2003)
- 東京でストラグル(2003-2010)
- 福井永蟄居(2010-)
- 反出生主義(2013-)
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怨嗟と屈辱にまみれた
その文体からこぼれ落ちる
鉱石のような言葉の数々。
今日は、働きすぎました。
「付録」より抜粋
詩人としてはあるまじきことです。
もし東大卒を憎む人がいたら手を叩いて喜ぶような転落の仕方である。
「クロニック・ペイン」より抜粋
自分にはこどもがいないこと。
「リバレイト」より抜粋
年収の問題。
いまだに憎んでいる人間のまなざし。
私が神であるなら、辞表を提出する。
「布告」より抜粋
どうか
「ぱるんちょ巡礼記」より抜粋
自分だけがしあわせでありますように
他のひとはみんな死んでしまいますように
お前、俺以外の人間と仲良くするなよ
「ぱるんちょ巡礼記」より抜粋
お前と一緒に遊んで
お前がこころから愉しいと思える人間は
俺じゃなかったのか
お前、俺を裏切るなよ
こいつ、泣いてるのかな
「ぱるんちょ巡礼記」より抜粋
泣いているのだとしたら、なんとかしたいな
なんとかしたいけれど、なんともできないな
僕たちはこれから死のうとしている。
「ふたり」より抜粋
実際に死のうとしている。
どうしてこうした自律性を持ち、エゴイズムの昏い海の中で蠢動している他者と共に生きていかなければならないのか。私には分からない。こうして世界は苛烈であり続けるのだ。
「田園交響楽研究」より抜粋
じゃ俺はいったいちんぽどこ入れてたんだよ!
「ぱるんちょ祭り」より抜粋
二年強に渡る精神的(肉体的)強姦というのは
「コール・ミー」より抜粋
罪とはならないのでしょうか。
みんなお前たちにゆずってゆくために、
「対話篇」より抜粋
いのちを吹き飛ばすもの、悪いもの、汚らわしいものを、
一生懸命に造っています。
心を壊すような
『ぼくは君がなつかしい ほろほろ落花生全集』の編者である高橋文樹。出版社破滅派の代表であり、自身も小説家である。ほろほろ落花生の盟友として、誰よりも著者を知る高橋文樹が、自身の編集した本書についてその胸中を記す。
「中原を理解することは私を理解することだ」という言葉を大岡昇平は自身の編纂した『中原中也詩集』に寄せている。私もそんな気分だ。『ぼくは君がなつかしい ほろほろ落花生全集』を理解することは、私を理解することであるし、破滅派を理解することでもある。この奇妙な名前を持つ文芸団体の魂のような部分が本書には書かれているのだ。
この本を世に問うにあたり、私は獣を野に放つような気持ちでいる。獣の入った檻の鍵をそっと開ける。寝息を立てて上下する獣の腹に耳を当て、その強い毛を頬に感じながら、獣の覚醒がほど近いことを確信する。私は鍵を開け放したまま、そっと檻を出る。足音を立てないように歩み去り、離れるにつれて走り出す。だんだん息が切れてきて、度を越したイタズラの結果が恐ろしくなってくる——そんな気分だ。この本を読んだ人がどうなってしまうのか、私には確信が持てない。単なる幸福や絶望を感じてほしいわけではない。本書の核心に触れた読者の魂が根底から揺さぶられ、どうしようもなく変わってしまうことを私は期待している。
本書を編纂するにあたって、どうしても入れたかった逸話が二つある。ロスジェネ世代の勝ち組・負け組をわける分岐点についてと、男性の性被害についてである。私はこの逸話について、いつか書かれるべきだと思っていたし、書き手として、その逸話を自身が書くことを夢見てきた。思いとどまったのは、それが他でもない彼自身の物語だったからだ。今回、ほろほろ落花生自身から代わりに書くことを許された。編者という立場には分不相応な紙幅を占めるノンフィクション二篇「クロニック・ペイン」と「コール・ミー」は、それぞれ私に取って、二〇年越しの文学的宿願である。
詩、小説、文学評論、箴言集、随筆、書簡といった様々な形式のテキストが本書には収められている。およそ一人の人間が残すことのできるテキストの種類としては、申し分のないバラエティだ。それらの多様なテキストには、やはり一貫性が、戯れに砕いた黒曜石のガラス質の刃のような鋭さが、秘められている。本書の核心を——ほろほろ落花生という才能がその魂を搾り出すようにして紡いだ文学的半生を——私は読者の胸に刻みつけたい。本書にも引かれる“heartbreaking”という英語表現があるが、その言葉通り、私はあなたの心を破壊してしまいたいのだ。
文・高橋文樹
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